「食から未来を創造 〜“医食同源の社会実装”から見える未来〜」シンポジウムを開催 Vol.3

2024年10月20日に、神戸大学 出光佐三記念六甲台講堂で行われたシンポジウム「食から未来を創造〜“医食同源の社会実装”から見える未来〜」。講演の締めくくりに行われたトークセッションの様子をご紹介いたします。

<配信映像(約3時間17分)>
https://www.youtube.com/watch?v=Naj4cMVo9w8 ※外部サイトに移動します

<ダイジェスト映像(1分54秒)>
https://prtimes.jp/tv/detail/3003 ※外部サイトに移動します

「食から未来を創造 〜“医食同源の社会実装”から見える未来〜」シンポジウムを開催 Vol.1』はこちら

「食から未来を創造 〜“医食同源の社会実装”から見える未来〜」シンポジウムを開催 Vol.2』はこちら

各講演の後は、大阪大谷大学薬学部大学院薬学研究科教授の戸村道夫氏を司会に、登壇者6名および東京農業大学客員教授の雜賀慶二氏によるトークセッションが行われました。

まずは質疑応答が行われ、はじめに「科学者は最先端をいっているが、人間の魂が本質だと思う。そのことはどう考えているか」という会場からの質問について、大矢先生が「今の科学は最先端ではありません。特に医学は幼稚ですが、最近は量子生物学などが伸びてきて今までの常識が覆っている。本当の最先端までいけば、人間の魂の話まで行くと思う」と答えました。次に千葉県で稲作をしているという参加者から安達氏に「千葉県でも作れるユキヒカリのような品種があれば教えてほしい」と質問。「今すぐではないが、ユキヒカリと同じような機能がある米を農水省で作ってもらっています。同じような性質をもった米がないか調査も行い、アレルギーにいい品種も調べています」と回答。会場からは「ほお」と感心する声が聞かれました。

また雜賀氏に「金芽米に精米したいけれど、その機会や接点がない。このコンソーシアムに応募すれば可能性はあるか?」と質問。雜賀氏が「近い将来、生産農家の方々にもご利用頂ける形を取っていきたいと考えている」と答えると拍手が起こりました。南出氏には「具体的に泉大津市の取り組みを他の自治体へ波及するプロジェクトはあるか?」と質問があり、「今、泉大津市には他の自治体からの視察が絶えません。また私も具体的な事例や金芽米の効果についても発信し、全国市長会でも登壇をして、給食の話もしました。さらに自治体間で広がるようにしていきたいと思います」と回答。同じく「金芽米のコイン精米機のようなものを作ってほしい」という問いに、雜賀氏は「現在、全国数十か所の工場で金芽米の精米を行っていますが、今よりはるかに活用できるような機会も考えています」と回答しました。

司会の戸村氏は、吉谷氏へ質問。「ちゃんと食べたいけれどもう少し痩せたい時はどうすればいいですか?」と尋ね、吉谷氏は「一番多い質問です」と前置きしつつ「糖質制限は短期間であれば有効ですが、それはリスクが高い。結果的に代謝と筋肉が落ちて体温も下がるので太りやすい体になります。長期的にスタイルよくしたいのであれば適量の米を食べてほしい」と答えました。

『「食から未来を創造 〜“医食同源の社会実装”から見える未来〜」シンポジウムを開催 トークセッション』画像1

その後、食から未来を創造する基礎の研究および社会実装を行うそれぞれの立場から発言。基礎として安達氏は「自分の生活や食事を変えずに健康になるにはまず、スーパーで買うお米を変えることが第一歩です」と話し、増村氏は「米はデンプンといわれますが、タンパク質もあるのでそれを利用する方法で食事を考えてほしい。米づくりの危機を解決することは重要なのでチャレンジしていきたい」と話しました。大矢氏は「アレルギーはその国の伝統的な食事をしているとなりにくい。日本人は米を主食にして伝統的な食事に回帰することで、アレルギーを克服する大切な方法になる」と訴えました。

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社会実装の部分で南出氏は「神話によると科学技術が発展する前から日本人は発酵や米づくりを行ってきた。日本がどういう国かということを知ることでもっと米を大切にしようという気持ちは広がると思います。もうひとつは今、農薬の使用などで微生物が減り、(野菜や米を作る)土はミネラル不足といわれます。それを補うために我々は給食にミネラル塩やミネラルたっぷりのふりかけを使っています。ミネラルは余分な毒素を排出するのに必要な栄養素です。そういうことも考えていけばもっと米の消費や健康促進が進むと思い、我々はそこに向かっていこうとしています」と発言。田渕氏は「当院は食生活を是正して疾患を治す教育入院を行っています。入院前に米を全然食べないという人に米を食べてもらうと、太っていても体重は着実に減っていきます。病院食が見本となっていくように作っていきたい」と話し、吉谷氏は「プロ野球選手の中でもバランスよく食べる人と、食べない人がいます。選手にアンケートを取ったところ、ジュニア期の栄養教育をしっかりとされた選手はプロになってからも米を中心に食べて栄養意識が高いことがわかりました。ぜひ小さい頃からお米の大切さを家庭で話していただくことが効果的だと思います」と話しました。

『「食から未来を創造 〜“医食同源の社会実装”から見える未来〜」シンポジウムを開催 トークセッション』画像3

雜賀氏は「これから日本を支える子どもや妊婦に医食同源米を食べてもらいたい。全国の行政も賛同されて前向きに進めてくれているが、大きなネックがある。学校給食は制度があり、がんじがらめの組織がある。農水省の葛原さんに、もっと地域住民や学校給食に医食同源米を進められるような制度にしていただきたいと懇願します」といい、それに対して葛原氏は「昔はパン給食だったが米飯給食が入り、今は週3.6日となっています。それぞれの自治体で事情は違いますが、食育は進んできていると思います。食育は国としても力を入れていくし、米の重要性もしっかり訴えていきたいと思います」と答えました。

雜賀氏は「学校給食のパンの原料はアメリカからわざわざ輸入している。米は日本で採れるので、学校給食でもっとご飯を食べさせてほしい。日本の将来を考えた時、子どもが一番大切。それを考えてほしい」と訴えました。会場からは「そうですよ」と賛同の声も上がりました。

次に、登壇者同士で質疑応答を行いました。まずは雜賀氏が「先ほど今の科学技術は高度じゃないという話があったが、同感です。どこの病院も患者であふれていますが、これは文明病です。西洋医学は素晴らしいが対処療法にすぎず、人の体は全体がつながっているから、現象が起こっているところだけ対処してもだめです。東洋医学も大切にして、医食同源で今日まで人類は残ってきたということを考えていかなくてはならない」と発言しました。

司会の大谷氏は田渕氏に「入院する前にどうしたら自分たちの食生活を変えられるか」と質問し、田渕氏は「時間栄養学では朝起きて1時間以内くらいに朝ご飯を食べて頭の中がリセットされるといわれます。生活リズムを整えて人間らしい生活をすることはすごく大切です」と答えました。

また戸村氏は南出氏に「今日の話を伺って流通を変える時は消費者あるいは都市型の人が仕組みを変えていくことが大切だと思いました。どうやってこれから続けていくのか、あらためて伺いたい」と問いかけ、南出氏は「サプライチェーンを作る時はトップの意識が大切ですし、トップがやりたいといっても進まないのはがんじがらめの組織があるから。例えば私たちは金芽米に変える時に、サプライチェーンを全部作り変えました。それができる能力があるかどうかです。泉大津市という事例があるので、やる気さえあればできます。今はBtoBですが、一般市民も農家とつながって日頃から支え合う仕組みができれば、もっと米の価格が流通に左右されないと思うので、次はそこにチャレンジしたい」と答えました。さらに南出氏は金芽米喫食による新型コロナウイルス感染症罹患率に低い傾向が見られることにも触れ、「こういう結果をセットで示すと行政も動きやすいと思います。次は泉大津市で金芽米を食べた子たちがどう変わるのかを出せればより説得材料になるので、実装から入って結果を出していきたい」と話しました。こうした発言に、大きくうなずく参加者の姿も見られました。

『「食から未来を創造 〜“医食同源の社会実装”から見える未来〜」シンポジウムを開催 トークセッション』画像4

田渕氏からは増村氏に「患者さんでご飯が苦手という方がいます。品種や米によって味が変わったりしますか?」と質問。増村氏は「品種によってタンパク質の量が変わり、成分も変わる。良食味の米は肥料を与えすぎると味が悪くなりますが、それの原因は難消化性のタンパク質が増えるからとわかってきている。日本人は粘り気のある米が好きでコシヒカリのような品種が増えました。今回のテーマのような健康と米との関係を品種から見ていくとヒントが見えてくると思います」と回答しました。

戸村氏が田渕氏に「米粉はどうでしょうか?」と聞くと、「粉にすると吸収は早い。私たちも米粉でお菓子を作って出しているがもちもちとして米に近いので、好まれる方は多い」と話し、雜賀氏は「小麦粉にはグルテンがある。最近のグルテンはアレルギーなど弊害を生むことが多くアメリカでも問題になっています。米粉にはグルテンの弊害がなく脚光を浴びています。最近はおいしい米粉のパンもできている。将来、学校給食にも米粉のパンを出すなどもひとつの方法だと考えています。また給食が金芽米に変わると、おいしいので子どもたちからパンより米がいいという声があるとも聞いています。いくら体にいいからといってもまずいものではだめです。みんなが喜ぶものを食べさせるべきです」と話しました。

最後に、雜賀氏が2つのコンソーシアムを代表して「本日、皆さんが講演で言おうとしたことは、食べることで健康になれるということ。私はもともと病弱でしたが、年が明けたら91歳になる。しかし今でも発明を続けています。こうしたことができるのも、健康だからです。健康になるには食べ物以外にないです。それも米です。もっと日本人全体に活かしてもらいたい。社会の利益が一番大切であり、両コンソーシアムはそれを根底に活動しています。皆さんには今後もご協力を仰ぎたいと思っています」と挨拶し、会を締めくくりました。

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